あるほなつきの創作絵本の中に、しかけ風絵本『ねこサーカス』があります。
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真室川町にあった醤油工場跡地を舞台に、ねこたちがサーカスを繰り広げるというおはなし。
そもそも制作の始まりというのは、この先取り壊される景色を記録として残しておきたい、という想いから、工場跡地をモチーフにした作品を手がけたことにあります。その時はまだ、写真と絵、それぞれの作品でありました。
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醤油工場には、そのシンボルというべき煙突があって、町の小学生たちは写生大会といえば煙突のある工場を描くのが定番だったということや、工場見学をさせてもらったときの、あの醤油の匂いは忘れられない、というお話を伺うと、町の人たちにとって思い出深い場所であることが想像できました。
そこで、せっかくたくさんの写真と絵があるのだから、絵本に仕立てられないかと思ったのです。
サーカスの華やかさとさみしさを兼ね備えた雰囲気は、廃工場のそれと似ているような気がしました。ねこたちが楽しそうに敷地内でサーカスするものがたりを、仕掛け絵本にできないかと考えました。
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はじめは、一冊だけの本格的仕掛け絵本を製作しました。
ねこが飛び出したり、綱渡りをしたり、大玉がぐるぐる回ったりするしかけです。
その一冊を経て、量産できる「仕掛け風」絵本へと発展したのでした。
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毎月展示替えをして展開している、梅里苑ギャラリー囲炉裏の「あるほなつき展」でも、昨年6月に『ねこサーカス』の世界を展示しました。
そのときには、会場を訪れた皆様から「懐かしい景色だなあ」とたくさんの感想をいただきました。
どこにでもありそうな、懐かしい景色。
それは、真室川町の人はもちろんのこと、真室川町の人でなくても、それぞれの景色と重ね合わせることのできる世界なのだと感じました。
場所や時間を限定させないそのスタンスは、あるほなつきの重要な視点といえます。