エーテル理論とは、ロバート・フックにより提唱された理論で、エーテルとは光の波動説の裏付けのために、宇宙に満ちていると仮定された媒質である。このように何らかの物質が宇宙に満ちているという考え方は古くからあり、遡れば、ギリシャ神話の原初の神アイテールにたどりつく。アイテール(エーテル)は、天空の国の輝く大気の神格化である。
アリストレテレスは、火・空気・水・土の4元素とは異なる完全元素である第5元素アイテール(エーテル)から構成されるとした。近代物理学以前の、アイテール(エーテル)は、目に見えない天空の国の領域と言えよう。
このように目に見えない領域に対する考え方は近代物理学の範疇としてはデカルトによる渦動説から幕を開けた。その後、エーテル理論に対してはニュートンの光の粒子説の立場との議論があり、そしてアインシュタインの特殊相対性理論によってエーテルの実在性(実在するのかしないのか)が更に議論されることとなる。
アインシュタインが相対性原理を最も根本的な原理として考えたのに対し、特殊相対性理論の基礎を造ったローレンツは相対性原理の根本がエーテルであると考え、物体の特性はエーテル中の運動により変化すると考えた。
*アインシュタインは、エーテルを物質を表す言葉とせず、真空であっても空間には重力場や電磁場が存在することから、こうした空間を「エーテル」と呼ぶことを提唱した。
本題からずれるが、現代物理学では、ダークマターという天文学的現象を説明するために考えだされた「質量は持つが、光学的に直接観測できない」とされる、仮説上の物質が議論されており、天文、物理にはそこはかとない好奇心が存在するのである。
この見えない領域について、アリストテレス、ガリレイ、デカルト、ロバート・フック、ニュートン、アインシュタイン、ローレンツという歴史に残る人物が議論してきたのだ。
僕は「何も無い空間」でのさまざまな現象に辻褄を合わせる物質を仮定し、それが存在するかどうかの議論よりは、見えない空気が存在し、それを意識することは遥かに簡単なことに思えたのだ。
人が大事なことを忘れているならば、空気を意識することにより、すべての人が忘れている大事なことに気づけるのではないかと確信したのだった。(つづく)