本との親しみ①〜有歩編〜

船乗りクプクプの冒険[/caption]

僕は、小学校4年生の時に、中学受験の国語の問題として、北杜夫著『船乗りクプクプの冒険』の文章に出会いました。それまで、読んできた文章とは異なるユーモアを感じとることができたのです。

それまで読んできた本からも沢山のことを学びました。言葉のひとつひとつから感じとる情景を頭に描くのが好きでしたし、描けないものも、頭の中に在る、さまざまな自身の記憶と結びつけて勝手に想像してみることも興味深いことでした。巧みな言い回し、伏線に感心したり、時には感情移入し、時には客観的にハラハラドキドキしたりして、親しんできたのです。

このように本そのものが好きになったのは、特に、芥川龍之介氏によるところが大きいのですが、このお話は、またの機会に。

このキタ・モリオ氏の文章を読んだ、最初の印象は、この北杜夫氏は、テキトーなことを考えられる、とりわけテキトーでぐうたらな人なんだということでした。その結果、僕は、あらゆることが、どうでもよくなってしまったのです。どうでもよくなってしまったので、心にゆとりが生まれました。

作者は、テキトーだけど、このユーモアは、読んだ人を、しあわせにさせるなぁ!と感じたのです。僕は、小説を書くということが、人を幸せにするとても素敵な仕事で、とりわけテキトーな人にでも、なれるのではないかと思い込んでしまったのです。

こういう人に、どうやったら、なれるのだろうか?真剣に考え始めていました…(つづく)

*写真は、北杜夫氏が亡くなった年に手に入れた、『船乗りクプクプの冒険』初版本。文庫本は新潮文庫で当時、180円くらいではなかったか。

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