「空気が目に見えていたのは、いったいどれくらい前だったかしら」
これは、空気売りの少女の冒頭の一文です。
空気売りの少女は2018年に出版された1冊ですが、あるほによる【空気を撮る】試みがスタートしたのは、2013年のことでした。
2011年の今日、東日本をとてつもなく大きな地震が襲い、一瞬にしてそこに暮らす人の日常を奪いました。山形に住む私たちにも、揺れによる建物の破損や停電などの影響の他に、放射能という見えないものへの恐怖が日常の中で意識されるようになりました。
山形の春。例年のように義父が摘んできた山菜を、食べてはいけないもののように感じたあの時、何か自分の中に、表現として伝えていくべきテーマが明確になった気がしたのです。
空気をテーマに作品作りを始めていたあるほが、手作り絵本をつくっていたなつきと出会い、表現活動を始めたのが2015年の夏。それぞれの写真と絵をリンクさせる2人展を重ねていく中で、空気を題材にした絵本を二人でつくる構想が生まれたのは、必然でした。
空気は、目には見えません。
見えないけれど、存在します。
目に見えないと、存在を意識することは難しいものです。
『空気売りの少女』は、空気だけではなく「見えないもの」、例えば「こころ」や「愛」「絆」「記憶」などを意識することの大切さを伝える一冊になっていると思います。
今日は3月11日。
目の前にあるものだけではなく、目には見えないいろいろなものに思いを馳せる一日にしようとおもう。